ロープアクセスとは?

「ロープアクセス」は広義な言葉で、高所等におけるロープを使用した移動・作業手段のことですが、国内においては2016年に労働安全衛生規則が改正され、「ロープ高所作業」として規程されました。
また国外では、ケイビング(洞窟探検)やクライミング等のスポーツで用いられている技術や道具が、より安全性や信頼性が必須となる産業用途のロープアクセスに応用され、法律や規格の整備へと繋がっています。

技術(テクニック)と、用いる道具(規格)には密接な関係があり、道具に関しては、手段や用途に応じて規格が細かく存在し、数多くの製品が流通しているヨーロッパのものが、昨今のロープアクセスにおけるメインストリームとなっています。
一方、ロープアクセスの技術に関しても、基本的な内容がヨーロッパ指令やISO22846(国際標準化機構)によって規程されています。(以下抜粋・要約)

・ダブルプロテクション(二重保護)の原則 (作業用ロープ・バックアップ用ロープ等)
・適切なハーネスを装着し、作業用およびバックアップ用のシステムが直接連結されていること
・作業用ロープには自動ロック機能のある器具を使用(手を離しても墜落しない)
・墜落時の衝撃荷重を6kN以内に抑える必要性
・適切な作業計画と管理(適切な能力のある作業指揮者が必要)
・適切なトレーニングと能力が必要
・作業チームにおけるレスキュー計画・能力が必要

イギリスでは約30年前に安全衛生庁の監修の元、IRATAインターナショナル(国際産業用ロープアクセス協会)が設立され、これまでに世界で20万人近くの資格取得者を輩出していますが、上記の内容に準拠した産業用ロープアクセス技術は取得のハードルが高いものの、19年間ものあいだ死亡事故は0と、あらゆる産業のなかで最も災害事故発生率が低くなっており、事実上、ロープアクセスの国際標準技術となっています。

国や現場によってはIRATA国際ライセンス取得者でないとロープアクセス業務を行うことができないとされており、知識・技術等のレベルによって次の3段階に分かれています。
資格取得までの流れは以下の通り。

※国内ではこちらで取得できます。http://www.ropeclimbing.jp/

・Level1:4日間以上のトレーニングと第3者機関(海外等)のアセッサーによるアセスメント(Level2,3も同様)
・Level2:Level1取得後、1年以上かつ1000時間以上の実務経験
・Level3:Level2取得後、1年以上かつ1000時間以上の実務経験

単独での作業は許可されておらず、作業チームには最低でも1人のLevel3技術者が必要。
また、いずれのレベルにおいても能力の確認のため、3年ごとに更新(トレーニング、アセスメント含む)が定められています。

※各レベルのロープアクセス技術者に求められる能力(要約)
・Level1:Level3ロープアクセス安全監督者のもと、特定範囲の作業を行うことができる。
・Level2:Level1の内容に加え、複雑なリギングおよびロープアクセス、レスキュー技術を持つ。
・Level3:Level1,2の技術と知識を実際に示すことができ、関連する作業技術、原理を理解している。より広範囲の知識および技術を持ち、最新の応急処置の資格を持つ。

一方、国内の「ロープ高所作業および特別教育(7時間)」で規程された内容は上記で示された国際的な水準には遥か及ばない最低限の基準にすぎず、安衛則改正後も、重症・死亡事故が絶えない状況となっており、国内においても国際標準の安全なロープアクセス技術を普及させるため、一般社団法人 日本産業用ロープアクセス協会(JIRAA)では、実技を重視した実践的な教育を行っています。